厚生労働省に「女子トイレ問題」について申し入れ状を送付

小規模事業所での男女別トイレ設置に関する事業所規則改正案に反対します

厚生労働大臣 田村 憲久 様

厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課 御中

 厚生労働省が2021年6月28日に発表した「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令案概要」において、現行の「事務所則第17条第1項」を改訂して、「同時に就業する労働者が常時十人以内である場合は、現行で求めている、便所を男性用と女性用に区別することの例外として、独立個室型の便所を設けることで足りることとする」とすることを提案しています。

 この事実がインターネットで知られると、7月25日からのわずか3日ほどの間に1500件ものパブリックコメントが女性たちから寄せられ、その大部分が今回の改定に反対する内容のものであったことは、厚労省のご担当者もよく知るところであると思います。

 私たち「No!セルフID 女性の人権と安全を求める会」は、10人以下の小規模事業所において男女共同のトイレ一つ設置するだけでよいとするこの改定案に強く反対します。事業規模に関わらず、女性にとって専用トイレは基本的人権の一つです。わずか30~40年前までは一部の大学や官公庁、公共の場でも女子トイレがないか、極端に少なく、女性の社会進出が著しく制限されていました。このような状況をこの数十年間で女性たちの運動や世間の意識変化を通じて少しずつ克服してきたにもかかわらず、それを法的に後退させるのは言語道断です。しかもすべての事業所の75%以上は10人以下の小規模事業所なのです。

 男性であれば、異性といっしょにトイレを共有していてもあまり羞恥心や不快感を感じないでしょうが、女性は違います。とくに小規模事業所の場合、お互いによく顔を見知った状態にあるので、たとえば女性が使った直後に男性が使うことに大いに羞恥心を感じるでしょうし、その逆も同じです。生理中などの場合はなおさらです。

 さらに深刻なのは、昨今、盗撮機器が著しく発達して、容易に目立たない形で盗撮機器を設置できるようになっていることです。すでにこの種の被害が多数発生していることはインターネットのニュースを見ても明らかです。職場における男女共用トイレが法的に認められるようになれば、このような盗撮被害がいっそう生じやすくなるでしょう。

 現在、すでに多くの小規模事業所では、男女共用のトイレが一つしか設置されていないという違法状況にあることが、指摘されています。したがって、この改定は現在ある男女別トイレをなくすものではないと厚労省は説明しています。

 しかし、市井の女性たちがこの改定案に反対しているのは、趣旨を誤解したからではありません。現在すでに男女別のトイレという原則がないがしろにされている中で、この逸脱を適法にしてしまうことへの当然の危惧を抱いたからです。

 労働者の権利と安全を守る立場である省庁として本来なすべきことは、事業者側の都合に合わせてこのような違反状態を追認することではなく、むしろ逆に中小零細事業所への予算支援などを行なうことで、男女別の専用トイレの設置を積極的に促すことです。

 もし法的に小規模事業所での男女共用トイレが合法的なものとして追認されてしまったなら、今後、小規模事業所において新たにトイレが設置される場合、男女別の専用トイレ設置に後ろ向きの発想が事業者に生じるのは明らかです。さらに、すでにトイレが男女に分かれている場合であっても、経営上の厳しさの増大とか、それ以外の用途での場所の確保などの理由で、共用トイレに後退しても法的に問題ないことになってしまうでしょう。

 世界的に男女平等の流れが存在する中で、女性の社会進出にとって決定的な意味を持つ男女別トイレの設置義務を法的に後退させることは、日本の国際的地位をいっそう引き下げることになるでしょう。日本において痴漢や盗撮の被害が多いこと、長年これらの犯罪の抑止ができていないことは、海外でもよく知られています。そのような中で、外国からの労働者や来客が来た場合に、日本の事業所の大部分を占める事業所で男女別のトイレがないことを知ったら、心底驚くことでしょう。

 どうか社会的に高い地位にある人々の声だけを聴くのではなく、市井の普通の女性たちの声を聴いてください。ツイッターのハッシュタグ「#厚労省は職場の女性用トイレをなくすな」を検索して、多くの女性たちの切実な声に耳を傾けてください。1500通以上も寄せられたパブリックコメントこそ草の根の女性たちの切実な声です。どうか、私たち女性の声を無視しないでください。

2021年9月9日

No!セルフID 女性の人権と安全を求める会
代表 石上卯乃、桜田悠希


厚生労働省の女性用トイレについての問題について詳しくはこちらです。

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